いぬねこほごぶ

DOG DUCA インタビュー!

DOG DUCA 基本情報

インタビュー:DOG DUCA 代表 高橋忍さん
インタビュー日:2019年8月5日
DOG DUCA紹介:名古屋市守山区で犬の保護活動、わんわん保育園、犬のしつけ教室などを行なっている施設です。

DOG DUCAを作ったきっかけについて教えてください。

 学生時代から飲食店でアルバイトをして自分でお店を作ったりしていたけれど、29歳のとき、詐欺にあってしまったんです。そこで、どうしてもお店を閉めなければならない事態になってしまい、借金をかかえてしまった。そこで、いろんな仕事をかけもちして、借金を払うという生活をしていたんです。借金かかえると周りにいた人たちがすーーっと引いていってしまって、さみしい思いをしました。アルバイトの途中1時間、2時間休憩時間があったので、休憩時間にいつも鶴舞公園(名古屋市昭和区)に行っていたんです。そのときに犬がすーーっと寄ってきてくれて。それがきっかけで、「あー犬ほしいな、犬だけだな、よってきてくれるのは。」と思って。そこで、やってきたのが、デュッカっていうミニチュアダックスの子。僕の家族の一員、そして僕のパートナーになってくれたんです。

「デュッカとずっと一緒にいたいなー」と思って、そこから一生懸命「トレーナー」の勉強とか、「トリマー」の勉強をするようになったのが、今の仕事をやるようになったきっかけです。さらに、なぜ、このような保護活動にまで至ったのかというと、犬を飼うことによって、今まで気にしてこなかった犬の社会の現実を知って「犬に救われたから、救っていきたい」と思うようになったんです。

docdog labの記事で、高橋さんの「人間よりも犬に選ばせたいから、譲渡会はしない」という文章を読みました。とてもすごいなと思いました。そのような考えがどこからきたのか教えてください。

 まず、ペットショップでは、人間が犬を選びますよね。「この子かわいい」とか「この子おとなしいからいい」とか「この子活発だからいい」とか。つまり商品あつかいをしている。あれっておかしいなって思ってて、犬にも心があるし、感情がある。だから、犬にだって活発な子もいるし、おとなしい子もいる。

 人間の環境や生活ライフにあった子が、その家に行けば、幸せになるという確率は高いと思うんですよ。たとえば、近所でいっぱい犬を飼ってて、ちょっとぐらい吠えても大丈夫だというところなら、たぶん、「うるさい!」って、言われないと思うんです。だけどマンションで隣近所であまり飼っていない、そんな所に、吠える子がいったら、「うるさい!」って怒られ、サークルにいれられたり、口輪をつけられたり、っていうことが起きるんです。

 でも、犬が吠えるって、人間がしゃべるのと同じなので当たり前だと思うんですよね。犬は「怖いよー」って吠えてみたり、「遊んでー」って吠えてみたり。吠えることで感情表現をしているわけだから。それをやめさせるのは、あくまでも人間の都合。ということは、犬自体の性格・個性にあった環境にいくのが一番望ましい。だから、僕は、犬と人間の架け橋として、今度は絶対に二度と誤ることない環境・家族を見つけたいと考え、僕は譲渡会をしないんです。人間の生活を聞く、人間が望んでいる子を聞く、「その人にあう犬をいかしてあげたい」ということが、僕が大切にしていること。だから、僕は譲渡会をしないと決めているんです。

 譲渡会では、犬や猫たちが見世物みたいになっているんですよね。見た感じ、決して綺麗なものではないんです。保護したままの汚い状態で、かわいそうなんですよ。保護されたのに幸せな顔をしていないんですよ。たしかに殺処分はないけれど、犬にとって「今」幸せであるかどうかが大事じゃないか、と。愛護センターに行けば殺処分機があるので殺処分されるかもしれない。だけど、Aという保護団体に行けば殺処分されない。しかし、汚い状態、シャンプーもしてもらえてない、安い食べ物を与えられている、そんなところに行ったって、犬は「助かった、幸せになった」って思っているかというと、そうではないと思うんです。やっぱり、保護したらまず、そこの段階で「幸せ」を感じてもらわないといけない、心のケアと心のリハビリをしないといけない、と思うんです。

しつけ教室、トリミング、アニマルセラピーなどいろいろなお仕事をしていますが、それぞれの大変なことや大切にしていることを教えてください。

 なぜしつけ教室をやるかというと、捨てない飼い主を増やすためです。吠えたり、噛み付いたりしたときに「悪いことをやったらダメでしょ!」って叱るんじゃなく、原因と目的をみつけて、きちんと飼い主さんに、しつけ方を伝えてあげる。すると、飼い主さんは、「あっ、こういうことで吠えていたんだ。」って気づいてもらうことができる。「しつけ」というと、「言うことを聞きなさい」という意味だと思う人が多いと思う。でも、そうではなくて、まずは、ちゃんとその子の個性を理解して、尊重してあげることが大切なんだと思います。そうすれば、こういうふうにしたらこの子は「怖い」と感じて、こういうふうにしたらこの子は「自信持つ」というのが分かってきます。だから、教え方というのをきちんと啓発していかないと、最悪の場合、「言うことを聞かない子はいらない」という飼い主は減らないなって思って。それでしつけ教室をやっています。

 トリミングも同じで、犬は、鼻・目・耳の順番で情報収集するから、いつも綺麗にしてあげたい。自分の体から臭い匂いがきたらものすごいストレスがあると思うんですよね。やっぱり自分の体をまず綺麗にしてあげる。これが、心身ともに豊かさをまず提供する第一歩だと思うんです。しつけが行き届いているだけではなくて、体から、心から、きちんとケアしてあげることも大切なんだということをトリミングを通して、飼い主さんに伝えていきたいと思っています。

 アニマルセラピーという活動は、「いらない」「不要だ」と決めつけられた犬が、人間のために働くんだよ、とか、かみついていた犬が、アニマルセラピー犬として活躍することができるんだよ、ということを伝えるために行なっています。最初から噛みつく犬はいないんです。最初から問題犬なんていないんです。人間がそういう犬にしてしまった、ということを知ってもらうための活動です。

DOG DUCAを運営するために必要な費用はどれぐらいですか。また、その費用は、どのように集めているのですか。

 まず、一番費用がかかるのが、医療費です。捨てられる子は、病気の子、高齢の子がダントツで多くなってしまいます。そうすると、普通の保護団体は予算的なところがあって、病気を治すことができなくてそのまま放置をする保護団体もいるわけですよね。自然に苦しみながら死んでいくのを待っているところも多いんです。でも、僕は、ここで保護した以上は、僕の子。だから、きちんと僕の子として、痛み・かゆみは絶対にとってあげたいんです。苦しい・痛い思いは絶対にしてほしくない。だから、治療は絶対にしています。1年間に100頭ぐらいは保護するので、医療費だけで、だいたい1年間に250万円ぐらいは使うことになります。1頭にかかる費用はだいたい3万円くらい。そのほかにもドッグフード、トイレシート代があるので、実際は400万円ぐらいかかってしまいます。

 こういうお金をどこから出しているかというと、保育園、トリミング・シャンプーに来てくださるお客さんの売り上げから、まず出します。それから、寄付という形で協力してくださる支援者もいます。そこの2つでこの費用を出しているという状況です。

犬や猫の殺処分を0にするために、一番私たちが心がけなければならないことは何ですか。

 まずは、人間自体が自分の命、自分を好きになってほしい。人がいま、希薄すぎる。「私は自分が嫌いだから、私なんて生きている価値がないから自殺する」とか、自分の命を大事にしない人が多いと感じます。だから、「誰でもいいから人を殺したい」なんていう、他者を傷つける人も多くなっていると思います。日本におかれている課題というのは、誰かを助けましょう、動物愛護を考えましょう、ということは二の次であって、まずは、「自分を大事にする人間になる」「自分の心を豊かにする」ということが大切。それができなければ、犬・猫の問題は解決できないと思っています。

 そのため、まずは、自分を好きになれるような、心豊かな社会にしなくてはいけない。それが僕の一番の課題です。

ドイツやオーストラリアでは、犬や猫の販売に関する条例があるそうです。日本も新しく動物を飼うときは、まずは、保護センターから譲渡するという流れに将来なると思いますか。

 ペットショップやブリーダーでの販売をドイツやオーストラリアでは規制しています。これはどういう規制をしているのかというと、ペットショップでは子犬を売るスペースが必ず1mぐらい必要なんです。つまり、トイレシートの上に子犬がいるような狭い、身動きができないような場所で販売をしていないということなんですよ。ちゃんとトイレとベットがあって、快適に生活ができるスペースがいるんです。そうすると、たくさん子犬を売ろうとしたら広いスペースがいる、つまり、それだけ高い家賃がいるんですね。本当は、売ってもいいんです。だけど、販売する頭数と家賃や店を運営する費用が折り合わないから、こういうところにはペットショップがないんです。でも日本では、そこが規制されていないから、ぎゅうぎゅう詰めで売ってしまっているんですね。ドイツやフランスでは、野生の動物がたくさんいる国ですから、根本的に動物に対する考え方が違うんですよ。動物と共生しているんです。日本というあり方自体に問題があって、こうなっちゃっているんですよね。

 たしかにこれからペットショップとかブリーダーの規制は出てくると思うんですけれども、とにかく子犬を売って、そこで商売にして生活をしているわけですから、ペットショップの店員さんにしろ、経営している人にしろ、そこで自分たちも生活しているわけなので、いま完全に、ポンと「やめろ!」というは、人権の問題が出てしまって、法律などで規制するのは難しいと思うんです。

 あとは、保護センターから犬を飼うというのは、虐待を受けた子、心を病んでいる子、飼い主から見放された悲しい心を持っている子が多いので、そういう子たちを、犬を飼ったことのない、猫を飼ったことのない人が世話できるかというと、難しいんですよ。右も左もわからない子犬を一生懸命育てていくことによって、愛情を持ち、飼い主も子犬とともに成長していく、ということがあるんです。「里親になりたい」という人がいても、「あなたはペットショップで買ったほうが良いですよ」という方もたくさんいます。

 あとは、単純に考えれば、犬を買うのをペットショップではなく保護犬ということにすれば、ペットショップが減っていくだろいうと考えがちですが、それをやってしまえば、ペットショップで売れ残った子たちが、どんどんと殺処分されてしまう。保護センターで殺処分される数より、ペットショップやブリーダーで殺処分されている犬の数の方が断然に多いですから。ペットショップで買ってもらわないと、売れ残った子も殺処分されてしまう。だから、今の段階で僕の口から、「ペットショップで買わないで、ブリーダーから買わないで」とは、言えないです。

みなさんに伝えたいことは何ですか?

 僕は小学校・中学校で命の授業をやっています。僕が、子どもたちに伝えたいのは「命を大事にしようね」ということなんです。いま子どもたちの中にも、虐待、自殺などがたくさんあります。まずは、自分の命を大事にすることが大切。自分の命を大事にして、自分のことを好きになっていったら、自然に「助けたい」という活動に興味を持つんです。良いところも悪いところも全部自分だから、その全てを受け止められる自分になってほしいなって思っています。

 「命を大切にする社会」。そのためには、まず、ひとりひとりの心が豊かになれる社会になってほしいと思う。僕は、今、犬の保護活動をやっているけれど、でも、結局のところ、全てが「命」の問題につながっているって、そう思います。

最後に

 高橋さんは、『ころんでも、まっすぐに!ー犬に救われたドッグトレーナーが見つけた<生命>をつなぐ道ー』という本を出版しました。私も読んでいて、その本にサインしてもらいました。サインの日付が「2019年8月2日」。今日は、8月5日。そのことを聞きました。

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今日の日付とは違うんですけれど、この日にちはデュッカの命日なんですよ。偶然にも、8月2日に発売が決定したんです。出版社から電話がきて、8月2日から書店に並ぶんですよって。
この日はデュッカの命日。だから、僕はサインをするときは、この日を書こうって決めているんです。
6年前の8月2日にデュッカがなくなったんです。
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