いぬねこほごぶ

花の木シェルター インタビュー!

花の木シェルター 基本情報

インタビュー:花の木シェルター 代表 阪田泰志さん
インタビュー日:2019年8月8日
花の木シェルター紹介:名古屋市内にある猫達のシェルターと譲渡会、ふれあいを一体化した開放型シェルターです。

花の木シェルターを作ったきっかけについて教えてください。

 当時、まだ、全然保護施設が名古屋になかったから面白そうだと思い、花の木シェルターを作りました。
いま、ここのシェルターには180匹ぐらいの猫がいます。2つ目のシェルターを今作っているのですが、床面積がここと同じぐらいあるので、2つ目のシェルターも180匹ぐらい入ると思います。

花の木シェルターで、保護している猫は、主にどこから引き取っていますか。

 ほとんど名古屋市動物愛護センターからです。

花の木シェルターを運営するために必要な費用はどれぐらいですか。また、その費用は、どのように集めているのですか。

 2店舗で、月額200万円ぐらいかかっています。ですから、年間2500万円ぐらいが固定でかかっている費用になります。基本的に僕は寄付に頼るという運営が好きではないので、きっちり自分の営業で費用をまかなっていきたい。まずは、花の木シェルターの入場料、譲渡する際にいただく38000円(1頭)、この2つが大きな柱になっています。

 あと、話は変わりますが、ここに来る子は病気だったり怪我をしている子も多いです。これから、日本でも一般的になってくると思いますが、「シェルターメディスン」という言葉があるんです。つまり、一般的な犬や猫に対する獣医医療ではなくて、こういうシェルターにいる犬や猫に施す医療のことです。日本ではまだそれを専門にしている人がいないし、一般の人が聞くとかなり衝撃的な内容です。分かりやすいところから言うと、子猫のワクチンって、生後2ヶ月半に1回、3ヶ月半に1回が普通なんです。でも、この考えにのっとってやると、生後1ヶ月でワクチン、それから、1ヶ月後にもう1回。その最初のワクチンで耐えられなくて死んでしまう子がいるんです。で、僕らの考えでは、その段階で死んじゃう子は「仕方がない」んです。そこを生き残った子を助ける。なぜなら、1ヶ月で打たなかったことにより、その子から感染症が広がって犠牲になってしまう猫の方が多くなりますから。

 それから、保護猫に対する医療レベルもどこまで追い込んでやるかというのですが、僕らはかなり手前でやめています。たとえば、1頭に10万円の医療費をかけるのであれば、10頭に1万円ずつかけた方が良いという考えなんですね。限られた予算の中で、どれだけ多くの猫が死なずにすむのかを考えないといけないんですよ。医療の考え方自体が他とはかなり違っていると思います。

犬や猫の殺処分を0にするために、一番私たちが心がけなければならないことは何ですか。

 1番かどうか分からないけれど、「まず、殺処分がある」という現状を知ること。今は、犬にしろ、猫にしろ、「飼う」という選択肢を考えた時に、ペットショップが1番にきてしまうと思うんです。そこの選択肢に「里親になる」という選択肢が上位に入ってくると、名古屋に関していうと状況がずいぶんと変わってくると思うんですよね。

ドイツやオーストラリアでは、犬や猫の販売に関する条例があるそうです。日本も新しく動物を飼うときは、まずは、保護センターから譲渡するという流れに将来なると思いますか。

 おそらくなると思う。ただし、すごく時間がかかると思う。法改正の進み具合をみていると最低50年はかかると思う。生体販売をどうするかというのは、結局のところ利権の問題なんですよ。それに関わっているビジネスがある以上、なくならないと思う。でも、そこにはすごく根深い問題がある。僕ら活動家がいろいろと声をあげていっても難しい。諸外国を真似て、生体販売を禁止しようということを考えるより、むしろ、生体販売されていてもそれでも殺処分を0になる形を作った方が絶対に良いと思う。その方が現実的だと思う。

多頭飼育崩壊の問題についてどう思われますか。

 多頭飼育崩壊の現場って、僕も嫌というほど入っていますけれど、もうとんでもない所です。今回、多頭飼育崩壊の現場に行って、もう1つシェルターを作ることになったんですけれど、いまだに、その現場に猫が何頭いるのか総数がわかっていないんですよ。飼い主も分かっていないし。まだ、引き上げている最中なんですけれど、一度に全部は無理で、10頭とか15頭とか少しずつ引き上げているところです。おそらく僕の感じでは全部で80頭ぐらいいるんじゃないかと思います。
 猫の多頭飼育崩壊って、本当に悲惨で見るに耐えないものが多い。今回のところも、別のところもそうなんだけれど、多くはマンションの1室で締め切られた限られた部屋の中で起きているんですよ。そういう状況だと、猫はある頭数を超えるとそれ以上増えなくなる。要するに、餌がない、環境が悪いということで。でもね、子どもを産まないから増えなくなるんじゃなくて、子どもがどんどん死ぬか食べられるか、つまり、その子が成長しないから増えなくなるんです。去年、市営住宅の多頭飼育崩壊の現場に入ったんですが、そこでもそうですが、そこで生きている猫のおそらく5倍ぐらいその裏で死んでいるんですよ。

 それで、飼い主さんは警察ですら10秒も耐えられないような強いアンモニア臭の中にたいていいるんです。多頭飼育崩壊の飼い主さんって、僕が今まで見たことをお話すると、3パターンいると思うんです。1つ目はお金がないから避妊手術ができなくて多頭飼育崩壊になる、2つ目はアニマルホーダーという精神疾患。つまり、動物を抱え込みたくてしょうがなくなる人。これはまだ、研究が進んでいなくて治療法が見つかっていない。しかも、アニマルホーダーの再犯率は100%と言われているんです。3つ目はこの2つの要素が両方ともあるパターン。僕が見た中でほとんどがこの3つ目にあたります。

 3週間前に入ったところが、犬10頭、猫9頭というところだったんですけれど、犬も猫も全部ブランド犬とブランド猫。全部買い集めてきたんですよ。で、僕が電話をしているとき、飼い主は睡眠薬を飲んで自殺しようとした。飼い主は現実から逃げたいんですよ。まともに話しをするのも難しい、そういう人たちと向き合っていかなくてはいけないのが現状なんです。

とても大変な多頭飼育崩壊の現場に行き続ける原動力はなんですか?

 ちょうどこの前、同じ質問を八百屋のご主人と話ししていたんですよ。その時に、僕が言ったのは、「八百屋はやめたければいつでもやめられるでしょ。でも、僕らの仕事はやめられないんです。やめてしまったら、じゃあ、コイツらをどうするの?ってことになる。だからやめられない」と。

 多頭飼育崩壊の現場に行ってて思うのは、基本的に飼い主には刑事罰を受けてもらいたいって思うんですよ。多頭飼育崩壊のニュースを聞くと周りの人たちは「管理できない人に猫を飼わせることが間違っている」という理論になるんですよ。でも、理論的には間違っていないけれど、現実はすごく不毛な理論なんですよ。それを現実的にコントロールすることなんてできない。だって、所得に応じて犬猫を飼っていいとか、そんな法律はないでしょ。ということは、問題意識が低くても、低所得でも動物を飼ってもいいような社会システムを作らなくちゃいけないと思います。ルールがなかったら、多頭飼育崩壊は永久に起き続けます。

 まずは、多頭飼育崩壊になったら刑事罰が待っているということをみんなが知っている社会にしないと、と思います。多頭飼育崩壊で引き上げた猫を里親に出していくって、1年とか2年とかそんなレベルじゃないんです。5年とか10年とかかかる仕事なんです。その分、経費が莫大にかかる。その経費を飼い主が出してくれるわけがない。だったら、ちゃんと受けるべき罰はちゃんと受けてほしい、そして、それを世の中にちゃんと発信していきたいと思う。それだけでも、抑止力にはなると思うんです。だから、僕がかかわる多頭飼育崩壊は基本的に全部刑事告発をしています。

 多頭飼育崩壊の問題は、社会システムの問題として扱わないと解決しないと思います。低所得者の飼い主に対して、どうやって犬猫の不妊手術を受けさせられるのか、安い獣医療の提供を受けさせられるのか、そんなことも踏まえて考えるべきだと思っています。

殺処分0についてどう思われますか?

 「殺処分0」って、一般的によく知られている言葉ですよね。でも、殺処分0ってそれがゴールではないんです。スタートラインです。名古屋の殺処分数って劇的に減っていますよね。平成24年ごろからがくっと減っていますよね。その原因は、1つは、引き取りを有料にしたってことなんです。そして、もう1つは、窓口の一本化なんです。それまでは各保健所で犬猫を引き取っていたんですけれど、今は、名古屋市動物愛護センターだけでしか引き取りませんよということなんです。その2つが殺処分数を激減させた圧倒的理由だと思っているんです。

 だから、問題解決にはなっていないと思っている。じゃあ、本来、愛護センターに行くべき猫たちはどこにいるのかということなんですよ。ここで、もう一つ見なくてはいけないデータがあって、それが「へい獣数」。ざっくりした言い方で言うと「車にひかれて死んでいる数」になります。ここ10年みると殺処分数は劇的に減ったけれど、へい獣数は変わらずずっと年間1万頭ぐらいなんです。僕は、正直言うと、殺処分数0よりもへい獣数の方が注目すべき値だと思うし、根深いと思っているんです。

 まずは、「殺処分数0にする」そこが一番の僕らの目標です。その次は「へい獣数を0にする」そこです。このために、何をするべきかというと、TNRという活動があるんです。これは、外猫やのら猫に不妊手術をして元の場所に返す活動のこと。で、、猫って実は車にひかれるほどバカじゃないんです。犬よりずっと運動神経がいい。ただ、ひかれている猫のほとんどがオスがメスをおいかけて、車道に飛び出して車にひかれるのが大半なんですよ。つまり、TNRをしていればへい獣数は激減するはずなんですよ。これは、正確なデータではないんですけれど、僕らみたいな活動家が名古屋で年間2000〜4000頭ぐらいTNRしているはずなんですよ。それでも、へい獣数は減っていない。つまり、どういうことかというと、母数が多すぎるってことなんです。母数が多すぎるから、2000〜4000頭が全体からみてもほぼ影響がないってことなんです。万単位で毎年TNRをやらないと無理なんです。でも、それには莫大なお金と人が必要、でも、それを僕らがやるには無理なんです。ではどうするか、まずは、「殺処分0」にするという実績をつくることなんです。「名古屋は殺処分0になった」ということを行政にもきちんと理解してもらい、その次のスタート地点に立てるよう理解してもらわないといけない。そうなったときに、TNRをへい獣数に影響を与えるぐらいの数にまでもっていけると思うんです。これが、僕のゴールです。