いぬねこほごぶ

名古屋市動物愛護センター インタビュー!

名古屋市動物愛護センター 基本情報

インタビュー日:2019年7月31日
名古屋市動物愛護センター紹介:名古屋市内にある動物を保護し、動物愛護と適正飼養の普及を目指す施設です。

名古屋市では、犬の殺処分数が0になったけれど、そこまでにした努力について教えてください。

 愛護センターにおいて、犬の殺処分で努力したことはいくつかあります。たとえば、新しい飼い主をみつけるためにいろいろな保護団体と連携したり、譲渡会を開催して里親さんを見つけたり、しつけ教室などを開催して捨てない啓発をしたりなど、いろんな活動をやってきています。  そのような活動に加え、最近では、人々や生活も変化してきています。昔は、犬を外で飼っている家が多かったんですね。でも、最近は、家の中で犬を飼うケースが多くなっている。だから、以前のように、飼い主の知らないうちに犬が増えるということが少なくなったんだと思います。昔は、飼い主が知らない間に家で産まれてしまい、犬の赤ちゃんを大量に持ち込んでくるケースが多くみられたんです。

 あとは、法律が厳しくなってきたということもあります。前は犬が飼えなくなった場合、すべての犬を愛護センターで引き取っていたんですね。しかし、最近、法律が改正されて、飼い主さんの事情を聞いて、引き取りを拒否しても良いというようになった。そのため、安易な気持ちで愛護センターに犬を持ってくるケースを断ることができるようになったんです。現在の流れとしては、一旦、飼い主さんに「飼い主を探してください」と伝えています。たとえば、ポスターを作ってもらって、飼い主さんにも犬の飼い主を探す努力をしてもらう。そういうこともあって、人の意識もかなり変わってきました。

 愛護センターでもいろいろな努力をしながら里親さんを探していきますが、中にはどうしても引き取りが難しい犬もいるんです。例えば、噛みぐせがあったり、病気や高齢だったりといった犬で、そのような犬は、愛護センターで引き取って育てているんです。従来であったら、殺処分されているような犬をここで育てているんです。あとは、ボランティアの団体さんにお声がけして協力してもらったりもしています。このような努力の結果、犬に対する殺処分は0になりました。

動物愛護センターの現状について教えてください。

<引き取り理由>
◆犬
飼育者・所有者が病気・入院:22件
引越し:7件
飼育者・所有者が死去:5件
◆猫
計画外の繁殖:142件
飼育者・所有者が病気・入院:18件
迷惑をかける:9件

<収容された数は?(平成29年度)>
◆犬
捕獲犬:149頭
引取犬:41頭
◆猫
自活不能猫:820頭
引取猫:191頭
負傷猫:150頭

犬や猫の殺処分を0にするために、一番、私たちが心がけなければならないことは何ですか。

 一番大切なことは、終生飼育です。ただ、自分だけの判断で、「はい、飼えます」というのではだめで、周りの環境(家族構成や住んでいる環境等)があるので、そういうことを全て考えたうえで、飼えるかどうか判断してほしいと思います。多いのが、お子さんが欲しくて欲しくてたまらないが、親はなんとなく乗り気がない、でも、子どもが言うからしかたなく飼ったという例です。始めのうちは子どもが「私が絶対見るから!」と言って育てていますが、子どもが高学年になると部活や勉強が忙しくなったり、友達と遊ぶのに一生懸命になってしまったりする。だんだんだんだんと子どもが面倒をみなくなって、結局、面倒をみるのがお父さん・お母さんになったりする。そうすると、お父さん・お母さんがあまり犬が好きではなくて、結局、手放すということもあるんですよ。ですから、一人の人が欲しいのではなくて、家族できちんと相談して、全員が賛成することが大切なんです。

 それから、犬や猫をお家に迎え入れたときは、吠えないように、噛まないように、ちゃんとしつけをしないといけないですよね。でも、甘やかせ過ぎたりすると、家の中をめちゃくちゃにしたり、やたらに吠えたりするなど、周りの人に迷惑をかけてしまう。そういったことも含めて、飼うのであったら、きちんとしたしつけ、管理が必要です。

 それから、他にも考えなくてはいけないことに、お金の問題があります。お金については、あまり考えていない方もいらっしゃいますが、とても重要な問題です。ペットショップでは最初に飼う値段はわかるけれど、結局、生涯にわたって、どれぐらいかかるかはわからない。健康でいった場合でも、平均で月1万円ぐらいかかります。これに、病気が発生したりして、獣医さんにかかるようであれば、どんどんとお金が膨らんでいく。お金の問題って、きちんと考えておかなければならないんです。ですから、「運命」とか「ときめいた」で、犬・猫を飼うのは、絶対にやってはいけないことなんです。愛護センターでは、「飼う前教室」というのをやっていて、実際に犬を飼うにあたって、どれぐらいの物をそろえなくてはいけないのか、どれぐらいお金がかかるのか、自分で電卓を打ちながら計算をしたり、どういったことに気をつけなければならないのかを教えています。他にも犬も歳をとってくると、介護が必要になってきます。そういったことも学んでもらっています。

 犬や猫を最後まで飼うっていうことの重要さということもきちんとわかってもらいたい思いますし、そのための教室もやっていますので、ぜひ、ご参加いただければと思います。

猫カフェなど、譲渡会をやっている施設や団体がいろいろとあります。どのように連携をしていますか。

 愛護センターに協力いただいている譲渡ボランティアの団体がいくつかあります。このボランティアによる譲渡会も愛護センターで開催したりしています。このようなボランティア団体の協力なしでは、愛護センターでの殺処分0という状況にはならないんです。

 犬の場合は、今まで実績のある団体に紹介してお願いをすると、比較的スムーズにいくケースが多い。猫の場合もいろいろとあるんですが、猫は、春と秋にいっせいに赤ちゃんを産みますよね。実は、産まれたばかりの猫ちゃん(自活不能猫)は、乳飲みボランティアに協力してもらっています。愛護センターで飼い方教室やキット(ミルクやミルクをあげる道具)をボランティアさんにお渡しして、ある程度、猫ちゃんが大きくなったら愛護センターに戻してもらうということをしています。

 こういうふうに、ボランティアさんたちと密につながりながら、保護活動を行なっています。

ドイツやオーストラリアでは、犬や猫の販売に関する条例があるそうです。日本も新しく動物を飼うときは、まずは、保護センターから譲渡するという流れに将来なると思いますか。

  ペットショップに行くとわかると思いますが、ガラス越しに小さなワンちゃんたちがいますよね。そのワンちゃんは生後49日を過ぎれば展示してもいいということになっています。欧米は56日になっています。1週間ぐらい日本より長いんですね。たかが1週間ではなく、されど1週間で、長く一緒にいることで、将来、問題行動を起こす可能性が低くなってくるんです。49日で引き離しちゃうと、親からの免疫が行き届かないというのが欧米の考え方なんです。そんなこともあり、今後、日本でも56日になっていくと思います。

 愛護センターから犬を譲渡するというながれになると良いのですが、動物を販売することを仕事にしている人がいるので難しいと思います。世界からみれば、日本は少し異質なんですけれど、でも、難しいのが現状だと思います。ただ、保護施設からワンちゃん、ネコちゃんを引き取ろうという意識が高まっていることは、我々も感じています。

 それから、「多頭飼育崩壊」って聞いたことありますか?自分が飼える許容範囲をかなりオーバーしてしまって、最終的にどうしようもなくなってしまって、行政にSOSを求めてくるケースです。我々がその場に踏み込んでいくと、家の中がもうぐちゃぐちゃになっているんですよね。家の中でネコが暴れまわっているケースがあるんですよね。多頭飼育崩壊できたネコちゃんは、私たちもかなり里親探しの努力をしますが、中にはかなり大きくなっているし、手が付けられないような子も多くいるんです。ちょっとでも触ろうとしたら「シャーッ」って怒ってくる。そういったネコちゃんは、本当に断腸のおもいで殺処分をしたりしています。

 安易な気持ちで飼わずに、一生、きちんとその命に寄り添えるか、責任を持つことができるか、きちんと考えて、犬・猫を飼って欲しいと心から思います。

<買う前の心構え10>
1:住居環境
2:家族の同意
3:アレルギーの有無
4:世話をする時間・体力はありますか?
5:必要なしつけをきちんとできますか?
6:引越ししても書い続けられますか?
7:老後のケアもできますか?
8:万が一飼えなくなった時に代わりに飼ってくれる人はいますか?
9:経済的な負担は問題ありませんか?
10:生涯にわたる計画